任意後見契約は何のためにする?
任意後見契約って、なんだか難しい名前だけど、そもそも何のためにするものなの?
認知症になってしまった時など、色々な判断が自分で出来なくなってしまった時に備えるためのものです!
認知症や精神的な障害によって、自分で物事を正しく判断出来なくなる可能性は誰しもあります。そうなると、自分の身の周りのことや手続きを誰かに代わりにやってもらわなくてはなりません。
自分が元気なうちに、あらかじめ頼む相手を決めてお願いしておくのが任意後見契約です。
私も認知症になってしまったら・・・と思うと心配なの。
もしも任意後見契約をしないで、重い認知症になってしまったらどうなるの?
日常生活の不便というのは勿論ですが、法律的な面で言うと「法律行為」ということが出来なくなります。
例えば、銀行でのお金の引き出しや振り込み、福祉サービスの契約、保険契約の締結や解約、不動産の売買や改修・・・といったことです。
本人が生活にどうしても必要な事でも、認められないの?
これは「自分で正しく判断が出来ない」という前提での話ですので、そういった人が財産の管理や処分を自由に出来てしまうと、誰かに騙されたり自分が損をするのに気づかないで契約してしまう可能性がありますよね。そういったことを防ぐ為に、出来ることが制限されるのです。
つまり、そもそもは本人を守る為なんですね。
なるほど、確かにそうね・・・。
任意後見制度であらかじめ備えておけば、自分の代わりに他の人がその「法律行為」っていうのもやってくれるから、安心っていうこと?
その通りです!
法定後見制度とは違う?
「成年後見人」という言葉を聞いたことがあるけれど、任意後見とはまた違うのかしら?
成年後見人の方が任意後見人よりも良く耳にするかもしれませんね。成年後見人を含む法定後見制度も、判断能力が衰えた人を守る為の制度であることは同じです。
しかし、異なる制度でそれぞれの特長がありますので、表にまとめてみました。
法定後見制度 | 任意後見制度 | |
---|---|---|
後見人をいつ選ぶか | 本人の判断能力が衰えた後 | 本人が元気な時 |
後見人を誰が選ぶか | 裁判所が選ぶ | 本人が事前に選べる |
効力発揮のタイミング | 裁判所で後見等開始の審判が確定した時 | 判断能力が衰え、任意後見監督人が選任された時 |
後見人が出来ること | 本人の判断能力の衰えの程度によって、裁判所が定めた行為~全ての法律行為まで、出来ることの範囲が変わる。(後見、保佐、補助の3類型がある) | あらかじめ本人と後見人が相談して決めた、代理権目録に記載しておいたこと |
後見人への報酬 | 裁判所が定めた額の報酬が支払われる。 | 任意後見契約をした時に決めた額の報酬を支払う。 |
任意後見人は本人が元気なうちに、もしも自分が衰えてしまった時のために備えておく制度です。
だから、基本的には本人の希望に沿って内容や頼む相手を選ぶことが出来ます。
しかし、成年後見人などの法定後見制度は本人が衰えてしまった後に裁判所に申し立てて開始するものです。
そのため、勿論本人の意思は尊重されますが、裁判所の許可が必要な場面が任意後見よりも多くなります。
そうなのね!
法定後見制度の場合、家族が後見人になりたいと思っていても選ばれないこともあるの?
裁判所はその人が本当に後見人として適しているかを総合的に判断して決めるので、いくら本人の面倒を見る気持ちが強くても選ばれないことがあります。
弁護士や司法書士といった専門家が選ばれることが多いようですよ。
任意後見監督人って何する人?
任意後見監督人っていう人がいるって聞いたんだけど・・・
任意後見監督人とは、読んで字のごとく任意後見人を監督する人の事です。
任意後見人が仕事をする時には、必ず任意後見監督人がセットになります。監督人には、家庭裁判所で選ばれた人がつきます。弁護士や司法書士のことが多いようです。
任意後見人は任意後見監督人に定期的に報告をし、不正がないか確認してもらいます。また、任意後見人だけで判断するのが難しいことがあった時は、任意後見監督人に相談することもあります。
法律で監督人が絶対に必要と決められているのは、頼む方としては安心だわ!
任意後見契約で出来ること・出来ないこと
でも、この契約をしていればなんでも任せられるという訳ではないでしょ?
そうですね。確かに、任意後見契約さえ結んでいれば100%なんでもOK!という訳ではありません。
任意後見契約で出来ることと出来ないことの例を簡単に表にしてみました。
任意後見契約で出来ること
- 預貯金口座などの管理と取引
- 家賃や公共料金などの支払い
- 家賃収入や年金などの受取り
- 生活費の送金
- 税金の申告と納付
- 自宅の修繕、増改築
- 不動産処分
- 福祉サービスの契約、費用支払い
- 要介護・要支援認定の申請
- 病院への入院手続、費用支払い
- 日用品の購入
- 市役所などでの手続き
任意後見契約で出来ないこと
- 施設入所の際に身元保証人になる
- 医療行為への同意
- 食事介助や排せつ介助などの介護
- 本人が行った契約の取り消し
- 認知や養子縁組などの身分行為
- 死後の事務
- 判断能力がある間の財産管理
任意後見契約で出来ないことは、他の制度を活用することで補うことが出来る場合があります。
例えば、任意後見契約は被後見人(サポートしてもらう人)が亡くなると同時に効力が亡くなるので、上の表にあるように亡くなった後の手続き(死後事務)を依頼することは基本的に出来ません。
しかし、任意後見契約とは別に死後事務委任契約を結んでおけば、自分が亡くなった後のこともカバーすることが出来ます。
なるほど、組み合わせて契約するということもあるのね。
死後事務委任契約については、こちらもご参照ください。
会話でわかる!死後事務委任契約のきほん
あとは、任意後見契約を結んでいても、後見が自動的に開始するわけではないということも知っておく必要があります。
どういうこと?
任意後見が開始するのは、本人の判断能力が低くなって、家庭裁判所に「任意後見監督人選任の申立て」をし、実際に任意後見監督人が選ばれた時からです。
つまり、後見が必要な状態になっていたとしても、誰かが家庭裁判所に申立てをしないと任意後見契約は発効されないのです。
それじゃあ、任意後見契約をした後も認知症が進んでないか、自分で身の回りの事が出来ているかどうかが分かる人がいないと意味がないのね。
そうなんです。実際、任意後見契約を締結していても適切なタイミングで任意後見監督人が選ばれず、サポートを受けられずにいる人も多いのではないかと言われています。
同居の家族がいたり、日常的に特定の人と会っているような場合であれば、異変や変化に気付くことも難しくないでしょう。しかし、それでも後見開始のタイミングを判断するのはなかなか難しい事です。
周りに気付いてくれる人がいなかったり、いたとしても任意後見人と全く接点がなく伝わらない場合は、尚更対策が必要です。
例えば、必要となった時に確実に後見が開始されるように専門家と「見守り契約」を結ぶということが考えられます。
せっかく契約をしても、必要な時に使われなかったら意味がないものね!
こんな人におすすめ
任意後見契約が必要な人ってどんな人かしら。
そうですね。例えば、将来自分が認知症になった後のことが心配な人、頼れる人がいない一人暮らしの人
ですね。
私も物忘れが多くなってきたし、今後認知症になってしまうのでは…と考えると怖いわ。
今は70代、80代でも元気に過ごしている人もたくさんいますが、一方で平均寿命と健康寿命の差が大きくなっていることも良く話題になります。
認知症になったら…という不安を抱えている人は多いと思います。
認知症が進行してしまってからでは、任意後見契約を結びたいと思っても契約自体が出来ない可能性があります。
是非体力的にも精神的にも余裕があるうちに、自分に必要かどうか考えてみてください。
誰に頼めばいい?
契約するとしたら、やっぱり何か特別な資格がある人にお願いしないといけないのかしら。
実は、任意後見契約を結ぶ相手に特別な資格は必要ありません。
家族や友人に受任者になってもらうことも出来ます。実際、70~80%程度の契約は親族や知人・友人が受任者となっているという統計もあります。
周囲に適任者がいない場合は、専門家が受任者になることも勿論ありますよ。
そうなのね!
自分の生活を支えてくれるパートナーを選ぶわけだから、よっぽど信頼している人じゃないと頼めないわよねぇ・・・。
確かにそうですね。信頼出来る相手かどうか、これが一番大事だといっても過言ではありません。
それと同時に、問題なく任された仕事をこなすことが出来るかも重要です。
任意後見人は、生活に関する手続き、色々な契約の締結、財産の管理・・・と仕事の幅が広く、受任者は任されたことを実行するために相当な手間と時間を割かれます。
本人の気持ちと意思への理解と、制度への理解の両方が必要と言えます。
契約した後でやっぱりやめたいと思ったら?
例えば、契約してしまった後で相手と大喧嘩してしまったり、もっと他に任せたい人が見つかった場合、途中でやめることは出来るの?
契約した本人であれば、いつでも契約を解除することが出来ますよ。
任意沽券をお願いする人(委任者)だけでなく、お願いされた人(受任者)も同じく解除出来ます。
ただ、解除の時期が後見開始後の場合は裁判所の許可が必要です。
相手には特に不満がないんだけど、内容をちょっと変えたいという時はどうかしら。
やっぱり一度今の契約を解除して、契約し直した方が良いの?
任意後見契約は必ず公正証書にしなくてはならず、契約が成立されると登記されます。そのため、契約の変更についても厳格にルールが決められており、自由に内容を変えることは出来ません。
例えば、引っ越しをしたから登記されている住所を変更したいとか、そういったことであれば可能です。(変更も公正証書にする必要があります)
しかし、委任者や受任者の変更、代理権の範囲(任意後見人が出来ること)の変更は出来ません。もしも内容を見直したい場合は、一度今の契約を解除して、新しい契約を締結し直すこととなります。
契約する前によ~~~~く考えて何度も何度も話し合って決めなくちゃね!
ご依頼頂いた場合の流れ
私も将来の事が不安だから、一度専門家に相談してみたいんだけど・・・。
各専門家によってやり方はそれぞれなので、今回は当センターにご相談頂いた場合の流れをご説明しますね。
初回相談
まず、メールや電話でお問合せ頂いたら、会ってお話を伺います。お客様が不安に思っていることや心配なこと、ご希望をお聞かせください。その場では簡単なご提案と、制度の説明などをさせて頂きます。
正式にご依頼頂いた場合
ご依頼を頂いた後、具体的なご提案をさせて頂く為の調査と詳細なヒアリングを行います。
面談は複数回行います。疑問点や分からないことはその間何度でもお尋ねください。
ご親族やご友人が受任者となる場合は一緒に面談をさせて頂きます。
契約書文案作成
調査した結果とヒアリング内容をもとに、契約書の文案を作成します。
いくつかの契約・制度を組み合わせてご提案することもあります。
例えば、当センターで契約受任者もお引き受けする場合は見守り契約書もセットで作成します。
任意後見契約は必ず公正証書で作成いたしますので、公証役場との調整や公証人との打ち合わせを行います。
公証役場で契約書作成
公証役場で契約書を作成します。
公証役場への手数料支払いは作成当日に公証役場へお支払い頂きます。
見守り契約などのサポート開始
当事務所が任意後見契約受任者で見守り契約を締結している場合は、定期的に電話・訪問をします。
任意後見契約発効
任意後見が必要な状態になったら、家庭裁判所に任意後見監督人の選任申立てがされ、任意後見契約が発効します。
費用について
任意後見契約をお願いするとしたら、どのくらいのお金を用意すればいいのかしら?
任意後見を委任する際に必要なお金は、契約書を作る為の費用・任意後見契約受任者と任意後見監督人に対して支払う報酬です。
契約書を作る為の費用は、公証役場へ支払うお金と、契約書作成料として専門家に支払うお金などですね。
任意後見契約受任者と任意後見監督人に対して支払う報酬は、任意後見契約が発効してから毎月必要となるお金です。一律でいくらという決め方ではなく、委任者の所有財産の額に応じて報酬額が設定されることが多いですね。
専門家に払う報酬って、いくらくらいなの?
専門家に依頼した場合、委任先やご依頼頂く内容によって料金が異なります。
任意後見監督人の報酬は家庭裁判所が決めます。だいたい月額1~2万円くらいのことが多いようです。
当センターでは主な業務の料金表をホームページで公開しておりますので、そちらをご参照ください。
お支払いはいつすればいいのかしら
契約書をつくる為のお金については、契約をする時にお支払い頂く必要があります。
後見が開始してからの報酬については、管理しているご本人の財産の中から毎月お支払い頂くこととなります。
料金について
お問い合わせ
私は難しい言葉で説明をされても分からないし、制度のことも法律のことも良く分からないんだけど・・・
なるべく簡単な言葉で、分かりやすいようにご説明するのでご安心ください。
もしも途中で分からないことがあったら、質問してもらっても大丈夫ですよ。
任意後見契約については当センターにご相談ください!
つくば死後事務委任相談センター
TEL:029-896-5632
MAIL: info@tsj-office.com