遺言書とは?
遺言書とは、自分の死後の財産の分け方などを紙に書いたもののことです。
遺言書を作成する人は増加傾向にありますし、ドラマや映画などでも遺言書が登場することがあるので遺言書という言葉自体は聞いたことがある人が多いのではないでしょうか。
遺言書を実際に書くとなると、実は守らなくてはならないルールがたくさんあります。
法律で決められたルールが守られていないと、折角書いても無駄になってしまうこともあります。
この記事では、遺言書とはどのようなものなのか、どのように書けば良いのかといった基本的なことについて説明していきます。
遺言書に書けることは決まっている?
遺言書は、自分が死んだ後のことについて書くものということは多くの人が知っていると思います。
では、死後のことであれば何でも書いて良いのでしょうか。
答えはNOです。
実は、遺言書に書くことが出来ることは「遺言事項」として法律で決まっているのです。例えば、周囲の人への感謝の気持ちを最後に書き残しておきたいと考える人は多いと思いますが、これは遺言事項ではありません。また、自分が死んだらこんなお葬式にしてほしい、とか、自分がいなくなったらペットの世話をこんな風にしてほしいといったことも、遺言事項には含まれません。(細かく言うと負担付遺言というものもありますが、ここでは説明を省略します。)
具体的に、遺言事項とは次のようなものがあります。
- 【法定相続】
・推定相続人の廃除および廃除の取り消し
・相続分の指定
・遺産分割の指定または禁止
・遺産分割の際の担保責任に関する別段の定め - 【財産処分】
包括遺贈・特定遺贈
(次の①~⑦についての別段の定め)
①受遺者の相続人の承認・放棄
②遺言効力発生前の受遺者の死亡
③受遺者の果実取得権
④遺贈の無効または執行の場合における目的財産の帰属
⑤相続財産に属しない権利の遺贈における遺贈義務者の責任
⑥受遺者の負担付遺贈の放棄
⑦負担付遺贈の受遺者の免責 - 【遺言の執行・撤回】
・遺言執行者の指定
(以下①~⑤についての別段の定め)
①特定財産に関する遺言の執行
②遺言執行者の復任権
③共同遺言執行者
④遺言執行者の報酬
⑤遺言の撤回 - 【遺留分】
目的物の価額による遺贈・贈与の負担に関する別段の定め - 【家族関係】
・遺言の認知
・未成年後見人
・未成年後見監督人の指定 - 【法文には定めがないが、遺言によって出来ると解釈されている事項】
・祭祀主催者の指定
・特別受益の餅戻しの免除 - 【民法以外の法律で定められているもの】
・一般財団法人の設立
・信託の設定
・保険金受取人の変更
では、遺言事項ではないことを書いたら、その遺言は無効なのでしょうか?
これも答えはNOです。
遺言事項に含まれないということは、書いても法的な効力がないというだけで、それが書いてあると違法になるとか、無効になるといったことではありません。
法的効力がないというのは、他の人への拘束力がないと考えると分かりやすいかもしれません。
遺言事項でないことをいくら書いても、そのことが誰かの行動や権利に制限を加えたり強制したりすることはないということです。
遺言事項ではないけれど、是非書き記しておきたい・・・そういったことを遺言書に残すために、遺言書の最後の方に「付言」を書くことが出来ます。
付言は遺言事項であるかどうかに関わらず、自分が書きたいことを書くことが出来ます。
そのため、先ほど紹介したような周囲の人への感謝の気持ちやメッセージなどを書くことが出来ます。
また、なぜこのような遺言書を書いたのか、どうしてこのような内容にしたのか、そういったことを相続人に書き残して伝えることも可能です。
遺言書には種類がある?
遺言書、と一言で言っても、実は数種類あることをご存知でしょうか。
一般的に遺言書として書かれているのは2種類です。それは、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。
本当は他にも種類があるのですが、よっぽど特別な場合でない限り遺言書と言ったら自筆証書遺言か公正証書遺言のどちらかであると考えてよいでしょう。
自筆証書遺言は、自分で紙に書く遺言書です。
筆記用具と紙があれば、いつでもどこでも書くことが出来ます。そのため、作成に手間も費用もあまりかかりません。
ただし、自筆証書遺言を書く時の最低限のルールを守らないと、遺言書自体が無効になりかねないので、ある程度の知識が必要だと言えるでしょう。
また、「自筆」とあるように、自分自身で書く必要があり、ワープロ打ちなどは認められません。例外的に、添付する財産目録だけはパソコンなどで作成しても大丈夫です。
そのため、自分で文字を書くことが難しい場合は自筆証書作成は向いていません。
また、自筆証書遺言は遺言書を発見した時に裁判所で「検認」が必要になります。
この検認を経て初めて色々な手続きに遺言書が使えるようになります。
<自筆証書遺言のメリット>
・簡単に作成できる
・お金がかからない
・内容を修正するのに手間も費用もかからない。
<自筆証書遺言のデメリット>
・ある程度の知識がないと、作成した遺言書が無効になってしまう可能性がある。
・遺言の内容を改ざんされたり、遺言書自体を破棄されてしまう可能性がある。
・晩年認知症を患っていた場合など、遺言書作成時点で意思能力があったか争われる可能性がある。
・自分で文字を書くことが出来ないと作成できない。複雑な内容や長い文章だと作成するのが大変。
・死後、遺言書が見つかった後に検認が必要。
ここにかいたような自筆証書遺言のデメリットは、「自筆証書遺言保管制度」を利用することである程度補うことが出来ます。
自筆証書遺言保管制度とは、一定の様式をみたした自筆証書遺言を法務局で保管してくれる制度の事です。
この制度を使うと、遺言書の形式的な要件を満たしているかをチェックしてもらえますし、改竄や紛失の恐れもなくなります。ただ、内容についての相談には応じてもらえませんので、そこは要注意です。
公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言のことです。
公証人とは、元々検事や判事といった仕事をしていた人の中から、法務省が公証人に任命した人です。
公証人が作成するといっても、勿論何も資料がないところから遺言書を作成することは出来ませんので、最低限必要な資料については自分で集める必要があります。例えば、戸籍や固定資産税評価証明書などが挙げられます。
その資料をもとに、公証人が相続関係を整理し、本人の意向を聞いて遺言書の文案を作成します。
公証人が作成するため、遺言を書く時の法的なルールについては心配せずにすみます。
また、作成後は原本を公証役場で保管してもらえるので、紛失してしまったり偽造されてしまうということもありません。
このように公正証書遺言はメリットも多いですが、作成するのに費用がかかります。遺言書に書く財産の価値の合計額に応じて、最低でも数万円程度はかかります。
<公正証書遺言のメリット>
・公証人と相談しながら作成することが出来る。
・公証役場で保管してくれるので紛失と改ざんの心配がない。
・自分で文字を書く必要がないので、複雑な内容や長い文章でも負担が無い。
・公証人が本人の意思能力確認を行うので、遺言書の効力について争われる可能性が低い。
<公正証書遺言のデメリット>
・費用がかかる。
・公正証書遺言があることを相続人等が知らないと、見つけてもらえない可能性がある。
・専門家に依頼しない場合は、平日公証役場に相談に行く必要がある。
自筆証書遺言と公正証書遺言の比較まとめ
自筆証書遺言と公正証書遺言についてまとめたものが次の表になります。
(ただし、自筆証書遺言保管制度を使用しない場合での比較となっています。)
自筆証書遺言 (自筆証書遺言保管制度を利用しない場合) | 公正証書遺言 | |
---|---|---|
誰が作るか | 自分で書く。 | 公証人が作成する。 |
どこで作るか | どこでも好きな所で。 | 公証役場で。(公証人に出張してもらう場合は指定した場所でも可) |
費用はどのくらいかかるか | 0円~数百円程度。 | 公証役場への手数料が数万~十数万円かかる。 |
どこで保管するか | 自宅など。 | 原本は公証役場。謄本と抄本は遺言者が持ち帰り、自宅などで保管。 |
改ざんや隠ぺいの可能性 | 可能性有。 | ほぼない。 |
検認 | 必要。 | 不要。 |
その他 | ひとりだけで書ける。 | 公証人と証人2名に内容を知られる。 |
遺言書のよくある質問
- 遺言書を書いた後、内容を変えることはできる?
- 遺言書は何回でも書き直すことが出来ます。
自筆証書遺言の場合、訂正の方法は法律で決められた方式に則っていないといけないので、その点は注意です。出来れば内容の一部訂正ではなく、古い遺言書を廃棄して新しく書いた方が良いでしょう。
公正証書遺言の場合、どの程度内容を変更するかによって公正証書遺言を作成し直すか、一部訂正かどちらかになります。どちらにせよ、最初の遺言書をつくったときと同じように公証役場で手続きが必要となります。
- 違う内容の遺言書が2通見つかったらどっちが有効?
- 新しく作成された遺言書に書かれている内容が、古い遺言書の内容に抵触している場合は、原則的には作成日が新しい方の遺言書が有効となります。
- 認知症になってから遺言書を書いてもいい?
- 少し物忘れが多い等の軽度の認知症であれば、それだけで問答無用に遺言書が無効になるわけではありません。常に意思疎通が難しいような、認知症が進行した状態だと遺言書を作成することはできません。(仮に作成しても無効です。)
どこまでが大丈夫でどこからがダメなのかのはっきりとした線引きは有りません。判断が難しい場合は、公正証書遺言にして公証人に相談することをお勧めします。認知症の疑いがある状態で自筆証書遺言を書いた場合、いざ遺言書を使う段階になってトラブルになる可能性が高いです。
- 遺言書に書く内容は、あらかじめ相続人に伝えておかなくてはいけない?
- 遺言書を書くのに事前に相続人の許可は必要ありません。自分ひとりで内容を決めて書くことが出来ます。
とはいえ、相続人に心の準備をする時間があった方が良い場合もあるでしょう。相続人や関係者に伝える義務はありませんが、必要に応じてあらかじめ言っておくのは何ら問題ありません。
- 相続人以外に財産を残すことも出来る?
- はい、出来ます。法定相続人以外に相続財産をわたすことを「遺贈」と言います。遺言書に「〇〇さんに私の全財産を遺贈する」と書くことも可能です。
しかし、法定相続人は兄弟姉妹を除き遺留分という最低限相続財産を受け取る権利を持っています。
また、遺贈で財産を受け取ると、相続人と協力しないと名義変更手続きが出来ない場合があったり、官公庁の許可がないと名義変更が出来ない場合があります。相続人として財産を「相続する」場合と、相続人以外の人が財産を「受贈する(遺贈された財産を受け取る)」のでは、法的な立場や必要な手続きが違うからです。
財産の受け取りにかかる税金も、一般的には遺贈の方が高くなります。
そのため、遺贈の場合は特に公証人や専門家と相談しながら慎重に遺言書を作成することをお勧めします。
こんな人におすすめ
- 相続関係が複雑な人
- 相続で親族がもめそうな人
- 「財産をこういう風に引き継いでほしい・分けて欲しい」という強い気持ちがある人
- ほとんど交流の無い人が法定相続人に含まれている人
- 行方不明者が法定相続人に含まれている人
- 認知症の人が法定相続人に含まれている人
- 法定相続人以外に財産を残したい人
ご依頼頂いた場合の流れ
当事務所に公正証書遺言作成をご依頼頂いた場合の流れをご説明します。
初回相談
まず、メールや電話でお問合せ頂いたら、会ってお話を伺います。お客様が不安に思っていることや心配なこと、ご希望をお聞かせください。その場では簡単なご提案をさせて頂きます。お持ちの資料をご持参いただけると、より具体的な提案をすることが出来ます。
正式にご依頼頂いた場合
ご依頼を頂いた後、具体的なご提案をさせて頂く為の調査と詳細なヒアリングを行います。
相続人に関する調査と、相続財産に関する調査が中心となります。
疑問点や分からないことは何度でもお尋ねください。
公正証書遺言文案作成
調査した結果とヒアリング内容をもとに、遺言書の文案を作成します。
公正証書遺言は必ず公正証書で作成いたしますので、公証役場との調整や公証人との打ち合わせを行います。
遺言書の内容が決まったら、遺言書作成日の予約をとります。
公証役場で遺言書作成
公証役場で公正証書遺言を作成します。
公証役場への手数料支払いは作成当日に公証役場へお支払い頂きます。
(必要に応じて)遺言書保管
お客様がご希望された場合、当事務所で遺言書を保管することもございます。
(遺言執行者に当事務所を指定した場合)死亡後、遺言執行
当事務所が遺言執行者に指定されている場合は、遺言者の死後、遺言執行業務にあたります。
お問い合わせ
私は難しい言葉で説明をされても分からないし、制度のことも法律のことも良く分からないんだけど・・・
なるべく簡単な言葉で、分かりやすいようにご説明するのでご安心ください。
もしも途中で分からないことがあったら、質問してもらっても大丈夫ですよ。
遺言書については当センターにご相談ください!
つくば死後事務委任相談センター
TEL:029-896-5632
MAIL: info@tsj-office.com