任意後見契約はいつから始まるか
高齢化が進む現代社会では、将来の認知症などのリスクに備えて「任意後見契約」を結ぶ方が増えています。しかし、「契約を結んだらすぐ後見が始まるのか?」「元気なうちに契約した方がよいのか?」と疑問を抱く方は少なくありません。今回は任意後見契約がいつから効力を持つのか、実際の流れや注意点について詳しく解説します。
任意後見契約とは?
任意後見契約は、自分の判断能力が低下したときに備え、信頼できる人(任意後見人)に財産管理や生活支援、医療や介護に関する事務などを代行してもらうための契約です。この契約は、公正証書で作成することが法律で定められています。
重要なのは、契約を結んだ段階では効力は発生しないという点です。あくまで「将来の備え」としての約束であり、本人が元気で判断能力がしっかりしている間は、後見人は何の権限も持ちません。このため、「契約をしたらすぐ生活に影響が出るのでは」と心配する必要はありません。

後見が始まるタイミング
任意後見契約が実際に効力を持つのは、ご本人の判断能力が低下し、家庭裁判所で「任意後見監督人」の選任が行われてからです。たとえば、認知症と診断されて日常生活や財産管理が難しくなった場合、家族や関係者が家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てをします。
家庭裁判所は本人の状況を調査し、必要性が認められれば、弁護士や司法書士などの専門家が任意後見監督人として選ばれます。この監督人が決まった時点で、初めて任意後見人は後見業務を開始できるのです。契約から発効までに時間差があるため、「いざというときにすぐ動けるよう、家族と連携を取っておくこと」がとても大切です。
認知症に備える場合の具体例
たとえば、70代のAさんが、自分が認知症になったときに備えて、信頼できる長女と任意後見契約を結んだとします。契約自体はまだ効力を持ちませんが、もし数年後にAさんが認知症を発症し、通帳の管理や医療費の支払いが難しくなった場合、長女は家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申立てます。
選任後、長女は正式に任意後見人として活動を開始し、父親の財産を守ったり、施設の入所契約をしたりといった支援が可能になります。つまり、任意後見契約は「判断能力がしっかりしているうちに結ぶもの」であり、「実際の支援は本人の状況が変わってから」という二段構えの仕組みなのです。
任意後見監督人の重要性
任意後見監督人は、後見人が契約通りに業務を行っているか監督する重要な役割を担います。監督人がいないと、後見人が勝手に財産を使ってしまうリスクがあり、制度としての信頼性が損なわれます。弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることで、本人や家族は安心して任意後見を任せられるのです。
また、監督人の選任申し立てはタイミングが重要です。判断能力が低下してからでは遅すぎることもあるため、家族や親族が普段から本人の様子に気を配り、必要なときに速やかに動けるよう準備しておきましょう。
選任タイミングが遅れるリスク
任意後見監督人の選任が遅れると、以下のようなリスクがあります。
- 生活資金が確保できない
本人の判断能力が落ちた状態で銀行口座が凍結されると、生活費や介護費が引き出せず、日常生活に深刻な影響を与える恐れがあります。 - 詐欺や悪徳商法の被害
高齢者を狙った悪質な勧誘や契約によって財産を失う危険があります。早期に後見を開始していれば防げたはずの被害も、選任が遅れることで防げなくなることがあります。 - 家族間のトラブル
「お金をどう使うか」「どの施設に入るか」をめぐり、家族の間で意見が対立しやすくなります。後見人がいれば調整役として機能しますが、不在だとトラブルが深刻化することがあります。
選任の遅れを防ぐ予防策
選任タイミングの遅れを防ぐためには、次のような準備が重要です。
- 契約内容を家族と共有する
任意後見契約の存在を家族に伝え、契約書の保管場所を共有しておきましょう。 - 申立て方法を家族が理解しておく
家庭裁判所への申立ては家族が行うことが多いため、流れや必要書類について家族に説明しておくと安心です。 - 定期的に医師の診断を受ける
判断能力の変化を医師と相談し、診断書を用意できる状態にしておくと、申立てが必要なときに役立ちます。 - 専門家に相談する
司法書士や弁護士などに契約後の状況確認を依頼しておくと、万が一の際に迅速なサポートが受けられます。
まとめ
任意後見契約は、将来の不安に備える大切な制度ですが、契約しただけでは効力は発生しません。契約後は、家族や専門家と連携し、適切な時期に監督人を選任できる体制を整えておくことが重要です。事前の準備でリスクを回避し、本人の希望を実現できるようにしておきましょう。

まとめ
任意後見契約は、判断能力が低下したときに備える大切な制度です。契約を結んだだけでは効力は発生せず、後見が始まるのは監督人が選任されてからです。認知症などのリスクを考え、早めに契約を準備しておくこと、そして適切なタイミングで監督人の選任申し立てを行うことが、安心して老後を迎えるカギとなります。
ご本人の意思や家族の協力がスムーズに後見開始につながるよう、事前に相談先を決め、情報を共有しておくことも忘れないようにしましょう。
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私は難しい言葉で説明をされても分からないし、制度のことも法律のことも良く分からないんだけど・・・

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