任意後見契約の代理権目録とは?

任意後見契約について調べていると、代理権目録という言葉を目にすると思います。
代理権目録とは何なのか?
どのように作成すれば良いのか?
この記事ではそのような疑問にお答えします。

そもそも任意後見契約とは?

任意後見契約とは、本人が将来判断能力が衰えてしまった時に備えて元気なうちに締結する「もしもに備えるための契約」です。

判断能力が衰えてしまう原因は色々あります。例えば、突然の事故や病気の後遺症、認知症などです。
いつ、だれが、どの程度判断能力が衰えてしまうかは誰にもわかりません。
自分自身で身の回りのことや財産の管理が出来なくなってしまった場合、何も備えをしていないと大変なことになります。
例えば、日常生活に必要なお金を銀行から引き出そうとしても、判断能力がないことを理由に断られてしまうことがあります。
賃貸物件のオーナーの場合、既存の入居者は良くても新規入居者との契約をすることが出来なくなります。
自分が持っている不動産を売りたくても、判断能力が衰えていると売ることが出来ません。
さらに、介護サービスなどを契約することも出来なくなってしまいます。

こういった事態を避ける為に、任意後見契約を結ぶという方法があります。
任意後見契約は、本人が選んだ相手と契約をし、本人の判断能力が不十分になってしまった時に初めて効力を発揮します。任意後見が開始すると、任意後見人が本人の代わりに契約や財産管理、諸手続きなどをすることになります。

任意後見契約は必ず公正証書で行う必要があり、公正証書が作成されると登記されます。

任意後見制度とは別に、法定後見制度というものもあります。
法定後見制度は、本人の判断能力が亡くなってから、後見人を裁判所が選任するという点で任意後見制度と大きく異なります。
その他には、任意後見制度とは違い後見人に取消権があること、原則的に一回後見人が選任されると、本人が亡くなるまで解任されることはないことなどの違いがあります。

会話でわかる!任意後見契約のきほん

任意後見契約の代理権目録とは?

任意後見契約を締結する際には、代理権目録を作成します。
代理権目録とは、委任者と受任者の間で決めた実際に委任する内容(委任事項)を書いたものです。
任意後見が開始すると、後見人はこの代理権目録に基づいて後見業務を行うこととなります。代理権目録に書いていないことについては代理権を持ちません。

委任する内容は本人の希望によって多くしたり少なくしたりすることが出来ます。しかし、あまり限定的な内容だと折角任意後見契約を結んでいても任意後見人で対応しきれず、結局法定後見の申し立てが必要になってしまった…ということもあり得ます。
任意後見と違い、法定後見は裁判所が後見人を選任するので、自分が頼みたかった人と全然違う人が後見人になることも多いです。
そうならないように、契約する時によく話し合って、ある程度包括的な内容の契約書を作成しておく方が良いでしょう。

代理権目録に記載されたことは登記されます。実際に登記するのは、本人ではなく公証人が嘱託によって行うこととなります。この代理権目録には、委任する内容の他に本人や受任者の名前を記載します。

代理権目録に書けないことは?

任意後見契約の代理権目録に書くことが出来ないこと(=委任できないこと)もあります。
ここでは書けないことはどんなことなのかを挙げていきます。

  • 医療や介護などの事実行為
    病院への支払いや介護施設利用料の支払いなどは委任することが出来ますが、実際に介護をしたり病院までの送迎をしたりといった事実行為は委任することが出来ません。
  • 婚姻や認知などの身分行為
    婚姻や認知、養子縁組などの身分行為は委任することが出来ません。
  • 医療同意
  • 延命治療の同意
  • 遺言書作成
    遺産分割協議、相続放棄などを委任することは出来ますが、遺言書の作成を委任することは出来ません。
  • 死後の事務に関する事
    任意後見契約は本人の死亡と同時に終了します。死後の事務については任意後見契約で委任することは出来ません。
    死後の諸々の手続きが心配な場合は「死後事務委任契約」を合わせて締結することを検討しましょう。
会話でわかる!死後事務委任契約のきほん

代理権目録の変更は出来るの?

任意後見契約を締結した後で、代理権目録を変更したくなった場合、どうすればよいでしょうか。

これには2パターンあります。
1つ目は、代理権目録に記載した内容が足りず、代理権を追加したい場合
この場合は、追加部分だけの新しい任意後見契約を締結するか、今までの契約を解除した上で新しい任意後見契約を締結するかのどちらかになります。
2つ目は、代理権目録が広すぎたので、縮小したいという場合です。
この場合は、今までの契約を解除して新たに見直した代理権目録を作成して任意後見契約を締結する必要があります。

今までの契約を解除する場合、例え代理権目録の一部見直しであっても初めて任意後見契約を締結した時と同じように公証役場で厳格な手続きを踏んだうえで作成しなくてはいかません。
当然、手間も時間も費用もかかります。
その上、時間の経過とともに判断能力が低下してしまった場合、新しく任意後見契約を結ぼうとしても不可能な場合があります。
例えば、最初の締結時には心身ともに元気で何の問題もなかったのに、その後認知症の症状が悪化した場合、内容を見直そうとしても公証人が新しい契約書は作成出来ないと判断する可能性があるのです。

このように、任意後見契約の委任事項の変更は簡単に出来ることではありません。契約の際には、委任者と受任者で良く話し合い、公証人にも相談しながら慎重に内容を決めましょう。

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ふくさん
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私は難しい言葉で説明をされても分からないし、制度のことも法律のことも良く分からないんだけど・・・

きーさん
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なるべく簡単な言葉で、分かりやすいようにご説明するのでご安心ください。
もしも途中で分からないことがあったら、質問してもらっても大丈夫ですよ。

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つくば死後事務委任相談センター
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